笛の音で動物や人を操る?童話ハーメルンの笛吹き男を解説

白雪姫やシンデレラ、ヘンゼルとグレーテル赤ずきんなど、誰しも一度は読んだことがある有名な寓話が多く揃うのがグリム童話です。
神話や教訓など様々な要素が盛り込まれ、衝撃的なラストを迎える話も少なくありません。
今回はそんなグリム童話の中から「音」がキーワードになっている「ハーメルンの笛吹き男」について環境スペースが解説します。


グリム童話ハーメルンの笛吹き男」のあらすじ

畑を耕し穏やかに暮らすハーメルンの町にネズミが大量出没し、住民が困っているとある日、笛を手にした男が現れます。
男は「褒美をくれるならネズミを退治してあげるよ」と持ち掛け、住民はそれを了承します。
すると男は、手にしていた笛を吹きはじめました。
笛の音を聞いたネズミが男の周りに集まってきます。
男は笛を吹いたままネズミたちを引き連れて川に向かい、ネズミをすべて溺死させてしまいます。
男はネズミ退治の褒美を要求しましたが、住民はこれを拒否。
怒った男は一度町を去ったものの、数日後に戻ってくると今度は笛の音で町中の子どもたちを連れてどこかへ行ってしまいました。


■「ハーメルンの笛吹き男」は実話だった?

あらすじを見る限りでは、「約束を破ると痛い目に遭う」といった教訓の寓話に思えるかもしれません。
しかし、それにしては具体的過ぎる点が多く、実話なのではないかと言われています。
実際にドイツにはハーメルンという町が実在し、町のマルクト教会には当時の様子を描いたステンドグラスがあったそうです。
オリジナルはすでに破損しているものの、文献を基に再現されており、そこには次のような記載がありました。

◎男が町に現れたのは1284年6月26日
◎誘い出された子どもは全員ハーメルン生まれで、人数は130人
◎子どもたちが姿を消したのはコッペン(丘)近くの処刑場

ハーメルンの町は実在しますが、「コッペン近くの処刑場」がどこを指すのかはわかっていないそうです。


■大勢の子どもたちはどこへ消えてしまったのか

笛の音に誘われて連れ出された子どもたちがどこへ行ってしまったのか諸説ありますが、今のところ有力とされているのが、「東方植民のために子どもが自ら町を出た」という説です。
当時のドイツは人口過多で、植民地開拓が進められていました。
男は開拓のリーダーとして現れ、子どもたちと新天地を目指したというのが現実的かつ、つじつまが合うことから有力視されています。


笛の音によって動物や人を意のままに操るというショッキングな内容の「ハーメルンの笛吹き男」ですが、ネズミに関するエピソードは後世になって付け加えられたものであることがわかっています。
もしかすると男は笛すらも手にしていなかったかもしれませんね。