聞くための音じゃない?超音波の性質と活用シーン
超音波とは、周波数が20,000kHz以上の音波のことです。
人間の耳では聞くことができませんが、超音波を使ってコミュニケーションを取る生き物もいます。
イルカは超音波を声のように発して仲間と会話したり、遠くにある魚の群れを発見したりするのに役立てているとか。
今回は超音波がどのような音を発しているのか、人間界ではどんな用途があるのかを環境スペースが調べてみました。
■超音波の音って?
そもそも音とは、耳の中にある鼓膜を揺らす振動のこと。
鼓膜が揺れると脳に信号が送られて、音が鳴ったと認識します。
例えばガラスのコップをスプーンで叩いた時、ガラスの振動が空気中を伝わって人間の耳まで届き、鼓膜が揺れることで「音が鳴っている」という情報が脳に伝達されるのです。
つまり、振動をキャッチするのが耳で、音を「聞いている」のは脳というわけですね。
この振動は波のように広がりながら気体・液体・個体の中を伝わるため、「音波」と呼ばれます。
音波が1秒間に振動する回数を「周波数」といい、これを表す単位が「Hz(ヘルツ)」です。
周波数が小さい=振動が少なければ低音になり、周波数が高い=振動が多ければ高音となります。
一般的に人間が音として聞き取れるのは20Hz~20,000Hzで、それ以上は「超音波」として定義されています。
超音波の音は人間には聞き取れないほどの高音域であり、これを活用している業界では「聞くことを目的としない音」として捉えられているでしょう。
■聞こえない音の利用方法とは
人間は、病気を発見する検査や対象物の厚さを測る検査で超音波を使い、プラスチック容器の加工にも超音波の振動を利用しています。
がんなどの病気を発見するために行われる超音波検査は「エコー検査」とも呼ばれ、超音波を体内に向かって送信し、跳ね返ってきた音波を使って診断する方法です。
超音波は臓器や組織に反射する性質を持っているため、戻ってくるまでの時間を測定して位置や大きさを測定することができます。
使い捨てライターの製造工程では、20,000Hzの超音波を当てることによって生じる摩擦熱を利用してガスが入っているプラスチック部分と着火装置を溶着しているそうです。
超音波機器のなかには人間がギリギリ聞こえる音を活用しているものもあり、ピアノが出せる最も高い音である4,000Hzの音は大気観測に、聞いていると頭が痛くなりそうな19,000Hzの音は金属加工に使われます。
人間にとっての超音波は、音というより振動を起こす道具として使われているのでしょう。
■普通の音と超音波の伝わる速度は?
音の振動は、空気中を1秒間に約340m進みます。
これは、人間の耳に聞こえる音域でも超音波でも同じです。
いっぽう金属の中では、音は1秒間に約5km進みます。
検査や加工の際に使用する超音波機器は、空気中と金属の中で音の伝わる速度が違うことや、超音波が持つ直進・減衰・反射・屈折・回折の性質を応用したものが多いでしょう。
超音波はさまざまな業種において、なくてはならない現象であり技術なのです。
超音波がまさかプラスチックの溶着に使われているとは、環境スペースも知りませんでした。
がん検査やイルカのコミュニケーション方法としてのイメージが強いですが、意外と身近なところにあるのかもしれませんね。