鈴虫はオスしか鳴かない?美しい音色の秘密

夏の終わりを感じられるものの一つに「虫の音」があります。
海外では騒音ととらえられるセミの鳴き声も、日本では夏の風物詩として楽しむ文化が根付くなど、季節と虫の音は切っても切れないものです。
そこで今回は秋を代表する虫の音である鈴虫について、環境スペースが解説しましょう。


■鈴虫はどうして鳴くの?

その名が示す通り「リーン…」と鈴が転がるような美しい鳴き声が特徴の鈴虫ですが、そもそもどうして鳴くのでしょうか?
実は、鈴虫はオスしか鳴きません。
メスの関心を引くためだけに、一生懸命鳴いていたのでした。
私たちが「風流だな」「情緒がある」と感じる鈴虫の鳴き声ですが、ニュアンスとしては「デートしようよ」「ちょっとお茶しない?」といった内容でしょう。


■どこから音が鳴っているの?

鈴虫は左右の羽をこすり合わせて音を発しています。
右羽はヤスリ状になっており、ツメ状になった左羽と高速でこすり合わせることで音を出し、体内で音を共鳴させることで大きく響かせています。
私たちの耳に聞こえる「リーン」という1回の音を鳴らすのに、鈴虫のオスが羽をこすり合わせる回数は40回以上ともいわれており、メスへ向けたアピールの必死さがうかがえます。


■鈴虫の不思議

身近な秋の虫である鈴虫ですが、その生態は少し不思議です。

・電話では鳴き声が聞こえない
鈴虫の鳴き声は重なり合うととても大きな音になり、時にうるさく感じるほどの音量になりますが、不思議と電話では聞こえません。
これは、鈴虫の鳴き声は電話機が拾えないほどの高さの周波数であるためです。
人気ドラマでこの生態をアリバイトリックに使ったため、知っている人も多いかもしれませんね。

・飛べる鈴虫もいる
鈴虫は成虫になってすぐのうちは羽が4枚ありますが、すぐに抜け落ち、音を発する2枚だけになります。
鳴く必要のないメスは羽が長く、空を飛ぶことができます。
ところがオスの場合は、羽が長いタイプと短いタイプがおり、短いタイプは飛べません。
羽の長さは遺伝や生まれた環境によって決まるため、運の要素が強いようです。
ではなぜ、羽化後は4枚も羽があるのかというと、他の草むらに移動して生息地を拡大することが目的ではないかと推測されています。
自由に飛べるメスを追いかけデートに誘わなければならないので、オスは羽が抜け落ちる前に必死で飛ぶのです。

 


鈴虫の軽やかな鳴き声は秋の訪れを感じられます。
しかし、あの鳴き声はメスを誘うための、必死なオスのアピールでした。
鈴虫の鳴き声が聞こえてきたら恋が成就するよう応援してあげましょう。